公開審査会
総評
優秀賞
特別賞
応募作品
JIAゴールデンキューブ賞2023-2026 受賞作品
2026年1月31日開催の公開審査会において、以下の通り「優秀賞」及び「特別賞」を選出しました。




公開審査会配信
JIAゴールデンキューブ賞2023-2026公開審査会の模様をYouTubeで配信しています。




JIAゴールデンキューブ賞2023-2026 総評
■審査委員長総評
希望を紡ぐ学びの実践
 前回のGC賞(2020-2023)は、2019年末から3年以上に及んだコロナ禍と重なる期間に実施されました。一方、今回はコロナ禍が収束し、人々の活動や地域での営みが徐々に回復し始めた時期と重なっています。しかし2026年の年明け以降、世界では既存の常識や価値観を揺るがす出来事が相次ぎ、国際情勢は不透明さを増しています。こうした混迷を極める世界状況の中、日本においても将来への不安や閉塞感が社会全体に広がっているように感じます。
 頻発する自然災害、少子高齢化や人口減少といった構造的課題に加え、建築やまちづくりに関わる多くの分野・地域において、担い手不足が顕在化しています。建築家として社会と向き合う立場から見ると、これらの課題は個別に存在するものではなく、地域の持続性や人と場所との関係性そのものが問われている状況だと言えるでしょう。
 そのような中、全国各地で官民を問わず展開されている「子どもたちを対象とした建築・まちづくりの教育活動」が、地域や大人を巻き込みながら、明るい未来を構想し、実際に形にしていく力を持っていることを、今回の審査会を通して改めて実感しました。社会が揺らぐ時代だからこそ、これらの活動が地域に希望と具体的な行動の糸口をもたらす、非常に重要な存在であると感じさせられた一日でした。
 今回は学校部門と組織部門の二部門からの応募がありました。応募資料だけでは十分に読み取れない活動の背景や工夫、関係者の想いを、プレゼンテーションを通して直接知ることができたことも、非常に意義深いものでした。GIGAスクール構想や一人一台端末の普及など、教育現場のIT化が急速に進む中にあって、いずれの取り組みも、子どもたちが対面で集い、共に考え、対話し、手を動かしてつくり上げていくという、リアルな身体性を伴う活動を大切にしていた点が強く印象に残りました。ITを活用しながらも、人と人との関係性や「場」の力を重視する姿勢は、これからの建築やまちづくりを考える上でも、多くの示唆を与えてくれるものでした。
 惜しくも最優秀賞には至らなかった他の活動も、内容は非常に多様で、多くの人々の想いが子どもから地域へと広がりをもって展開している、魅力的な実践ばかりでした。審査会終了後には、応募者の方々から「他の活動の発表を聞いて大きな刺激を受けた」「とても参考になった」「全国でこれほど多様な取り組みが行われていると知れただけでも応募した甲斐があった」といった声が多く聞かれました。
 今回、私自身も初めてGC賞の審査に携わりましたが、まさに同じ思いを抱きました。
 子どもと建築、そしてまちづくりをつなぐこれらの活動は、専門家や経験者だけのものではなく、これまで関心を持ってこなかった人々にとっても、新たな関わり方や一歩を踏み出すきっかけとなるものです。この活動の輪がさらに広がり、日本全国、さらには世界へと、多様なアイデアと実践に満ちた「子どもたちを対象とした建築・まちづくりの教育活動」が展開されていくことを、心から期待しています。
赤松佳珠子
シーラカンス アンド アソシエイツ パートナー
法政大学デザイン工学部建築学科 教授


■各審査委員総評
学び場の主体性と継続性
 審査員として関わるのは二回目の、ゴールデンキューブ賞。私はミュージアムエデュケーションの視点から、学びの質とその後の展開のしかたを重視して審査を行いました。教育的な観点からは、その学びが単なる知識の伝達ではなく、学習者自身が主体的にその学び場に関われる余地のあるものを高く評価しました。自らが能動的に学ぼうとする時に、学びの効果は大きくなり、一生ものの記憶となります。美術館に収められている美術品と比して、建築という対象は、生活の中でもアクセス可能な資料と言えます。学習者自身が学びの環境にコミットしたり、学習内容に関われる余地のある企画が増えることで、生活環境の中で主体的に学ぶ姿勢が敷衍していくことを期待しています。また、今回提出されたプロジェクトの多くが、プロジェクトのサスティナビリティが高いことが印象的でした。せっかくよい企画であっても、主催者だけが孤軍奮闘するだけでは長続きしません。長期的に継続できる形を探ることで、より多くの参加者が建築について学ぶ機会が増えることを期待しています。総じて、今回提出されたプロジェクトは、より継続性が期待できるものが多く、将来の展開が楽しみになりました。
会田大也
山口情報芸術センター[YCAM]学芸普及課長


未来を築く力へとつながる学びの連鎖
 未来を築くのは子どもたちです。建築や都市を学ぶことは、子どもたちが文化、社会、経済、政治を良くしていくために大切なことへの気付きに繋がるものです。
 一方で、日本では建築を通した子どもたちへの教育の場は限られており、個々の活動を共有する機会も少ないと感じています。ゴールデンキューブ賞は、活動を表彰し、お互いに励まし合うことを目指す学びの場であり、審査を通して私自身もまた新たな学びと刺激を受けました。
 今回応募された取り組みは、スケールや対象年齢が異なりアプローチ法も多岐にわたっていましたが、各活動に共通して感じたことは、子どもと大人の双方向の学びを続けている姿勢と活動主体の大人たちの熱量でした。その姿勢を間近で見て体験を共有することも、子どもにとって大きな学びの一つであり、子どもたちの主体性を引き出す種になると思います。
 建築を通して、子どもたちが自分たちの未来や環境、社会は自分たちの手で作っていくものだと実感を育むきっかけとなり、それを実現する力が育つ取り組みがこれからも増えていくことを願っています。
福口朋子
フトフアトリエ
設計機構ワークス パートナー
UIA建築と子どもゴールデンキューブ賞2023学校部門最優秀賞受賞



JIAゴールデンキューブ賞2023-2026 優秀賞
各部門(1点)(プロジェクト名/チームメンバー)


◆優秀賞 学校部門
[No.5] SDGsについて考える学校トイレ改修〜建築すべてが総合学習〜/加藤大輔(日進市役所)、岡本将成(日進市役所)、相野山小学校、樽見大三(樽見建築設計事務所)




 小学校の老朽化したトイレ改修工事を、4年生の総合学習と連動させ、「身近でリアルな題材」として学びと参加の場を創出した取り組みでした。
 この活動を主体的に推進していたのが、愛知県日進市の職員で教育委員会から異動した部署での取り組みであったという点も印象的で、部署を越えて柔軟に取り組みを継続できる市の運営体制に驚かされました。また、掃除のあり方について子どもたちが考えた内容が改修後もしっかりと継続されている点は、学びが一過性のものではなく、日常へと根付いていることを示す重要なポイントだと感じます。日進市では、子どもが主体的に学校づくりに関わる権利を尊重し、改修時においても平成25年からこうした取り組みを継続しているとのことでした。資料に記されていた「日常の中にある社会課題や、自分たちの行動の意味を考える入口になったと捉えている」という言葉からは、子どもたちの本質的な学びを大切にする市の姿勢が強く伝わってきました。(赤松佳珠子)

 学校改修の機会を捉えて、トイレという誰もが自分ごととして捉えられる要素にフォーカスして、設計者や施工者など様々な担い手たちの活動を紹介した点が心引かれました。トイレという身近な対象のなかに組み込まれた様々な工夫について深く洞察したりする機会を提供している点がユニークです。また、愛知県日進市の職員が計画や実行の担い手となっている点についても、あらゆる自治体へ水平展開できる可能性があり、評価されました。(会田大也)

 行政の取り組みとして部署の枠を超えて建築環境分野での学びの場を創出し続けている点が稀なことでとても価値のある取り組みであると感じました。日本の自治体が抱える縦割りによる課題を乗り越えられているのは、取り組み主体となっている日進市が「未来をつくる子ども条例」を掲げていることも大きなポイントになっていると思います。また、単発ではなく継続的に取り組みを行うことで、子ども達は自分たちが考えたことが実現するんだという体験を通し、社会と繋がっていることを実感するきっかけになっていると感じました。これからもぜひ取り組みが続くことに期待しています。(福口朋子)


◆優秀賞 組織部門
[No.1] 公衆トイレ「インフラスタンド」を中心にしたまち・コミュニティ・防災の体験学習〜「トイレからはじまる まちのリビング」づくり〜/小澤大悟(有限会社石和設備工業/KAWAYA-DESIGN)、高橋真理奈(シン設計室)、三由野(ポーザー株式会社)




 行政などの公的主体ではなく、民間の水道工事会社が主体となって公衆トイレを建設し、その場所を拠点にマルシェや防災教室、防災キャンプなどを展開する取り組みでした。 水道工事業界が抱える人手不足や担い手不足、下請け構造といった課題を背景に、それらを業界内部の問題として抱えこむのではなく、社会に新たな価値観を提案する場としてインフラトイレの活動を展開している点が非常に印象的でした。これら一連の活動が、着実に人材確保や社会的認知度の向上につながっていること、さらには災害時に上下水道が使えなくなった場合を想定した自立・循環型公衆トイレの社会実験や、公民連携・他事業者との水平展開まで視野に入れている点からも、強い将来性を感じました。
 この取り組みは、ボランティア活動ということではなく、水道工事という事業そのものを社会の中で再定義し、事業の持続性と地域コミュニティの活性化を同時に実現しようとする、極めて社会的意義の高い実践であり、今後も注目していきたいプロジェクトです。(赤松佳珠子)

 水道設備会社の取組みでありながら、公共性が高い活動であることが素晴らしいです。トイレという社会イメージを反転させる、人が集う安全な場所へ、というメッセージだけでなく、将来的なオフグリッドまでも見据えた視座など、合点のいくコンセプトに溢れた活動内容でした。プロジェクトの背景として、社会貢献や知恵の継承といった骨太の思想が横たわっていることが伝わる、迫力のある提案とプレゼンテーションでした。(会田大也)

 環境教育への貢献度、地域コミュニティの醸成、継続性、発展性、いずれの視点においても非常に優れた活動です。
 活動のプロセスがとても明快で、身近な問題意識を起点に、まちにひらいた楽しい学びの場を生み出し続けている点がすばらしいと感じました。活動の記録も細やかで、俯瞰的な記録からこども目線の記録まで取っていることも教育の双方向性に繋がっているように思います。「インフラスタンド」のアプローチが日本だけでなく、世界でも展開する可能性を感じるとともに、その実現が豊かな未来に繋がると感じられました。これからも活動が発展していくことを願っています。(福口朋子)


JIAゴールデンキューブ賞2023-2026 特別賞
プロジェクト名/チームメンバー


◆特別賞 学校部門
[No.7] 校舎から学ぶ建築:子どもたちと巡るModern Movement/岩井祐介(慶應義塾幼稚舎)




 著名建築家による設計の校舎を対象として、建築の様々な要素を学ぶプロジェクトです。プログラム全体を通して、学外のゲストを迎えて子供たち自身がツアーを率いるなど、当事者意識を涵養するための工夫が凝らされている点が評価されました。自分たちの通う校舎の観察や理解を通して、他の建築物、構造物などへの興味も育てられると思います。(会田大也)


◆特別賞 学校部門
[No.10] ラ・アナモルフォーズ(歪像地上絵)/泰然(泰然+きみきみよ)




 平板測量はあまり一般的にはなじみがなく、特に今日のデジタル技術の進展の中で注目されにくくなっていますが、空間認識と身体的理解を伴う測量の基礎教育として非常に重要な役割を担っています。そして、その測量教育がより広い学びに応用できるように、学習指導要領に寄り添う視点や、STEAM教育との連携も視野に入れていることなど、質疑応答を経て、よりその奥深さを知ることができました。一見地味に見える技術の習得を地域イベントとして多くのひとたちと連携しながら一つの芸術作品として完成させたことには大きな意義があり、今後も芸術と科学、教育と地域を繋ぐ活動として継続・発展していくことを期待しています。(赤松佳珠子)


◆特別賞 組織部門
[No.2] はかって、かいてワークショップ/福士若葉(株式会社竹中工務店)、木嶋真子(株式会社SALHAUS)、鈴木秀太郎(株式会社武田清明建築設計事務所)




 コロナ禍におけるソーシャルディスタンスの確保やオンライン授業の普及は、子どもたちの生活から身体を介したリアルなコミュニケーションの機会を大きく減少させました。このワークショップは、こうした状況に対する危機感から、身体感覚や身体スケールを基準とする「ジブンものさし」を通して、自分自身を実体として認識し、まちや他者との関係性を再構築するきっかけを創出しています。さらに、学生時代の自発的な試みを社会に出て働きながらも継続し、商店街イベントに参加するなど、若い人たちがリアルに感じた危機感を実行に移し継続することで、まちや子どもたちの活動に繋がり、さらなる広がりが生まれていることに敬意を表したいと思います。(赤松佳珠子)


◆特別賞 組織部門
[No.3] 未来の京町家と京都の通り「近未来社会と共存する京町家」/萬野光雄、荒川晃嗣、池井健、鳥野良子、梅原悟、岡田良子、小田裕美、川上聡、後藤直子、田所克庸、多田正治、長谷川渉、波多野崇、原田稔、松木一恭、矢部直輝(以上JIA会員)、 塔本研作(塔本研作建築設計事務所)、鈴木大晴(立命館大学)、永井孔美子(京都芸術大学講師)仲田理子(高校生)、福本拓真(当時:京都工芸繊維大学)




 京都の建築・都市文化を学ぶ活動で、約20年間活動の継続と、社会の状況に柔軟に適応させながら取り組み方を変化させ続けている点が素晴らしいと感じました。ゴールデンキューブ賞は3年間の活動に対する募集なので、3年毎の活動内容のプレゼンテーションになっていますが、20年間の積み重ねについてももっと情報が整理されると、活動の魅力がより伝わるのではないかなと感じました。最終成果に掲げられている「30年先の景色」まであと10年、これからの活動も楽しみにしています。(福口朋子)


◆特別賞 組織部門
[No.4] 親子で楽しむ建築ツアー&ワークショップ/和田菜穂子(東京建築アクセスポイント)




 体験学習やワークショップという手法を用いて、建築にフォーカスしたツアー活動を行っているプロジェクトです。頭だけで理解する知識とは異なり、建築という対象は身体スケールで感じたり、微細なディティールにフォーカスしたりと、物理環境で実物に触れるからこそ得られる理解の領域が残された対象です。また、大人であっても詳しいとは限らないので、親子で参加できる体験デザインとなっている点も評価されました。(会田大也)


◆特別賞 組織部門
[No.6] お菓子で建てる!古代ローマに学ぶ理想のお風呂屋さん/吉橋久美子、濱田浩嗣、瑞慶覧長空(以上Edible Arch.)、高浜市やきものの里かわら美術館・図書館




 子どもたちに建築への親しみを持たせるための工夫として、お菓子を建築材料にみたてたワークショップです。幼少期に力学を体験として学ぶという視点や、ワークショップを振り返りとしてテキストマイニングを活用するなど学びの形を工夫している点、また継続的に子どもたちと一緒に「食べられるもので建築をつくる」という取り組みに挑戦し続けていることに好感を持ちました。「失敗学」と題して、失敗を通した学びに焦点を当てることも計画されており、これからの発展も楽しみな活動であると感じました。(福口朋子)


◆特別賞 組織部門
[No.9] うちゅうせん― 地域の竹でつくる、遊びと身体表現をつなぐ舞台づくり/長友貞治、南宏和、青柳道夫、松本尚吾、青柳舞(以上宗像現代美術展実行委員会)、細海拓也、須藤由唯、有吉一翔、吉田敬子、入江成道、内田龍之介、増井萌絵、長野紘史朗、横田唯人(以上鹿児島大学 細海研究室[HOSLAB])、瀧口元和(Life Style Design)、宗像里山の会




 地域で問題になっている放置竹林の伐採に高校生が参加し、その竹を用いて大学生が設計・制作した「うちゅうせん」は、宗像大社で開催された芸術祭への出展を通して地域資源を新たな価値へと転換する試みとなっています。制作過程には多くの子どもたちも参加して最終仕上げを行うなど、世代を超えた協働によって作品を完成させたことは、単なる造形にとどまらず、地域との関係性を再編する実践として高く評価されました。この継続的な活動は、子どもたちが自らの成長を実感するとともに、地域への理解と愛着を育む契機となることでしょう。ここから将来のまちを担う人材が生まれてくることを期待しています。(赤松佳珠子)


◆特別賞 組織部門
[No.11] 「みらいのまち」- 小学生が考える理想のまちづくり/吉柴宏美(株式会社 TheBoundary)、安藤僚子(合同会社デザインムジカ)、瀧澤日以(PHABLIC WORKS)、9kidslab「つながりのデザイン」クラスの子どもたち




 空間建築とファッションを組み合わせたオンラインクラスのプロジェクトの一つでした。「みらいのまち」を作るために分野を超えて意見を出し合い協力し合う学びの様子は、社会は誰かが勝手に作るものではなく自分たちの手で作っていくものだということを知る機会になっていると思います。ファッション以外にも他分野のデザインとの掛け合わせの可能性もあり、どのような化学反応が子どもたちの学びにつながっていくのか、今後の展開を楽しみにしています。(福口朋子)


JIAゴールデンキューブ賞2023-2026 応募作品
プロジェクト名/チームメンバー


[No.8] FAF×小倉高校「建築」の探求的な学び/松岡恭子(理事長)、青木仁敬、大谷芽生、大庭早子、加野正和、小宮智華、宗賢治郎、徳永哲、橋迫弘平、吉田寛史(以上FAFメンバー)




 高校の総合的な探求の時間、の単元のなかで、地元建築家などで構成されたメンバーが、建築の知識を伝達する授業を行っています。高校生のうちに専門家から特定の分野のことを深く教わる機会がある、ということは、知識伝達のみならず、キャリア形成の指針にもなり得る重要な機会だと思いました。学校以外の場所への展開の余地もあると、さらに評価が高まったかも知れません。(会田大也)


応募作品数
応募作品総数…11点
・学校部門…4点
・組織部門…7点
・出版物部門…0点
・視聴覚作品部門…0点
※応募作品の部門については審査委員会にて決定しました。
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